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2021.02.19
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いまさら聞けないSDGs(COALA net - vol8, 2021年冬号)

当社コンサルタントによる『いまさら聞けない』シリーズ。今回は、SDGsに関して解説しています。

――まずSDGsの概要について説明してください。

SDGsとは、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」のことです。17のグローバル目標と169の達成基準、さらに232の指標があります。

当社コンサルタントによる『いまさら聞けない』シリーズ。今回は、SDGsに関して解説しています。

――まずSDGsの概要について説明してください。

SDGsとは、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」のことです。17のグローバル目標と169の達成基準、さらに232の指標があります。

SDGsの達成状況を各国で比べると、OECD(経済協力開発機構)諸国とそれ以外の国々では大きな差があります。日本は欧州よりやや遅れていますが、米国より進んでいます。

日本では首相と各国務大臣で構成されるSDGs推進本部が2016年5月から年2回会合を開いています。2019年末に発表した『SDGsアクションプラン2020』では、SDGsを企業経営に取り込み、ESG投資を推進する方針を示しました。ただ帝国データバンクの2020年6月の調査では、規模の小さい企業ほどSDGsへの意識は希薄です。逆に言えば、中小企業がSDGsを実践すれば、先進的な企業として注目されるでしょう。

――なぜSDGsという考え方が生まれたのですか。

世界の共通課題である格差社会や気候変動を解決して持続可能な社会を築こうという考え方が根底にあります。そのためには地球上全て人々が2030年までに掲げた持続的な発展のために達成すべき目標に取り組むことが求められているわけです。

――ESGやCSR、CSVとはどう違うのですか。

SDGsが持続可能な世界を築くために解決すべき目標ならば、ESGは企業などのSDGsへの取り組み状況を評価する基準であり、CSRやCSVはSDGs達成のための手段です。

ESGは、環境、社会、企業統治の略称です。近年はESGを考慮せずに利益のみを追求する企業は長期的なリターンが期待できないとして投資対象から外される傾向にあり、企業はSDGsへの取り組み状況を開示する必要があります。

CSRは、企業の社会的責任と訳され、企業が事業活動を遂行するうえで社会に与える様々な影響を加味しながら責任を持って対応していくことを指します。

CSVは、共通価値の創造という意です。企業には売上や利益という経済的価値が、社会には社会課題の解決という社会的価値が存在し、周囲の組織や同じ価値観を持つ個人と手を組み、一つの活動で経済的価値と社会的価値の二つの価値を創造しようという試みです。

――具体的な事例を紹介してください。

SDGs推進本部が主催する『ジャパンSDGsアワード』で表彰された事例では、たとえばフードエコロジーセンターの取り組みです。同社は食品残渣から製造するリキッド発酵飼料を産学官連携で開発しました。これは輸入飼料の代替飼料で、穀物相場の変動軽減と飼料自給率の向上に寄与したのです。同社の飼料で飼養された豚肉のブランド化がさらに浸透すれば、養豚業者や小売業者、消費者も巻き込んだ循環型社会の構築が実現します。

もうひとつは、業務用洗剤メーカー、サラヤの事例です。同社はウガンダとカンボジアで手洗いを基本とする衛生の向上を推進しました。ウガンダでは、商品出荷額の1%をユニセフの手洗い普及活動の支援に充てたうえ、現地法人を設立。現地生産の消毒剤やその使用方法を含めた衛生マニュアルを提供しています。

これらに共通しているのは、自社の主力事業にSDGsを絡め、社会的課題の解決を図った点でしょう。

ただ一方で、効果が薄いと指摘されている事例もあります。たとえば2020年7月から実施されたビニール袋の有料化です。狙いは、脱炭素化と海洋のプラスチックゴミの削減ですが、中国では日本と比較にならない規模のプラスチックゴミが排出されており、世界規模の規制の整備が先だという指摘があります。

あるいは、日本の漂着ゴミのうち、ポリ袋は僅かに0.5〜0.6%しかなく、むしろ重量換算で全体の40%以上を占める魚網やロープのゴミや、個数換算40%近く占める飲料用ボトルの対策が先だという意見もあります。SDGsへの取り組みを考える際は費用対効果の観点も重要なのです。

――SDGsに取り組む利点や留意点はありますか。

企業がSDGsに取り組む利点は、まず企業の信用度とイメージの向上です。長期的に見れば、優秀な人材を獲得できるようになったり、既存社員の企業への忠誠心が高まって離職率が低下したり、主力事業にうまく結びつけば、新たな収益の創出に繋がります。

SDGsに取り組む際の留意点は、SDGsをどのようにして本業と結びつけていくか、担当者任せにせずに会社全体で考えることです。SDGsを本業と結びつけていけないと、いずれ社会の変化に対応できなくなるリスクに直面します。

SDGsへの取り組みは、持続可能性の追求です。長期的な企業の成長と社会の変化を合致させることによって様々な取り組みを実行していくことが重要です。

――どのようにSDGsに取り組むべきですか。

SDGsへの取り組みを探す方法としては次の3つが考えられます。①自社の強みからSDGsの達成に資する要素を抽出する、②企業のあるべき姿からSDGsの施策を抽出する、③社会的課題を俯瞰して課題解決の施策を抽出する、です。中小企業であれば、まず①の方法がよいでしょう。既存事業のなかからSDGs達成に貢献し得る要素を探し、企業体力がついてから②や③の手法でより大きな施策を探していけば十分だと思います。なお、SDGsに取り組む際は、広報体制を整備しておくべきでしょう。営業戦略や人材獲得戦略と絡めて市場に発信していくことが肝要です。

SDGsを進める際の主要なアプローチ

解説:佐川 嵩徳(アソシエイトマネージャー)

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