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ピー・アンド・イー・ディレクションズ

2019.11.21
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いまさら聞けないAI(COALA net - vol 4, 2019年夏号より)

『いまさら聞けない』シリーズ初回はAI(人工知能)がテーマ。AIで一体何ができるのか。

――最近なぜAIが話題になっているのでしょうか。

実は過去にもAIが脚光を浴びたことがあって、現在は第三次ブームなのですが、これまでの二回のブームと異なるのは、コンピュータの処理能力が劇的に向上し、人間の脳のような仕組みを再現できるようになったことです。
背景には、自動的に機械がデータから特徴を抽出して学習するディープラーニング(深層学習)という技術の進歩があります。人間が見たり聞いたりして区別していた生のデータをAI自身が見分けたり、聞き分けたりできるようになったのです。
さらに周辺機能の向上も大きく影響しています。カメラやマイクなどの情報を取得するセンサや、情報を大量に処理するサーバ環境、さらには多くのデータを即座に受け渡しできる通信インフラのほか、機器の安定駆動を可能にする蓄電池の進化なども、AIの技術革新を支えています。

――AIはどこでどのように使われていますか。

先進的な領域では、まず自動運転でAIの画像認識技術が使われています。車に搭載したカメラが写す信号の色や障害物の有無などの周辺情報をAIで認識し、それを踏まえてどう行動すべきかの判断を行ったうえで、走行を制御できるようになったのです。
もうひとつは、医療分野における画像診断です。こちらもAIの画像認識技術を用いて、がんや骨折などの画像診断の精度を高めたり、医師の負担を軽減したりと、有効に利用されています。
他の身近な例では、ユーチューブやアマゾンなどのサイト内で「おすすめ」と表示されるレコメンド機能です。ユーザーの膨大な利用情報をもとにAIがコンテンツや商品の利用関連性のパターンを解読して、ユーザーが関心を持つと思われるものを表示しています。
ホテルの価格設定もAIの機能ですね。季節や時期に応じた需要の変動や、他のホテルの価格、自社の稼働率をもとに、利益が最大になるように部屋ごとに自動で価格が設定されます。  そのほか、クレジットカードの不正使用の検知やコールセンターの業務支援などにもAIが使われています。

――どの程度の企業がAIを活用しているのでしょうか。

AI白書のアンケートによると、実際にAIを導入している企業は全体の10%程度と少ないのですが、AIの導入に「関心がある」、もしくは「導入予定」と答えた企業は80%にのぼっています。関心が高まっているので、今後は導入が加速するかもしれません。

――製造業でAIを導入している例はありますか。

たとえば、キユーピーは、AIの画像認識技術を使って原料のジャガイモに異物が混入していないかといった、不良品の選別をしています。従来の目視検査よりも、業務の効率化・高度化が図られたようです。
三井化学は、製品の品質管理にAIを導入しました。従来は熟練のスタッフが品質の異常をチェックしていたのですが、製造過程における原料や炉の状態と製品の品質のデータをもとに異常検知のパターンをAIに学習させ、品質の異常を20分前に自動で把握できる体制を整えたのです。

――中小企業もAIは活用できますか。

もちろんです。いずれも大企業の例を紹介しましたが、同じようなAIの機能を中小企業も利用しています。むしろ人手不足が深刻な中小企業こそ、AIを導入するべきでしょう。担い手不足で、技術の承継に課題を抱えているところが多いからです。一部でもAIで再現できれば、技術は標準化され、存続します。

――企業がAIを導入する場合、何が重要ですか。

何のためにAIを導入するのか、まず目的を明確にする必要があります。たとえば、「製品の良と不良の見極め」や「業務の効率化」などです。
そして、元データとなる知見や暗黙知を構造化するとともに、AIの開発・導入に向けた体制を築く必要があります。カメラやセンサなどのコアな技術は既成のものを使えますが、具体的なアプリケーションは企業が個別に設計・開発する必要があります。私どももご支援しておりますが、外部の専門家にご相談されることをお勧めします。
また表のとおり、AIの導入に対しては補助金も活用できるので、AIに興味がある方は検討されてみてはいかがでしょうか。

解説: 木部賢二(ディレクター)

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