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ピー・アンド・イー・ディレクションズ

2019.07.27
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地域企業経営の針路(COALAnet - vol.3, 2019年春号より)

Product(製品)、Price(価格)、Place(場所)、Promotion(販売促進)と、4つの変数で分析するマーケティングの〝4P〟というのがあるが、ここで3つ目に挙げられているように、「場所」は、事業の継続を図るうえで重要な要素だ。

その点を考慮すると、地域企業にとっての場所は、顧客が少なく、働き手が不足している地方だ。首都圏の企業と比べると、どうしてもハンディがある。ただ、どのような地方都市にも人が集まる場所があるので、状況によっては、人の集まる場所へ移動することも検討する必要があるだろう。

地域企業の不利な点をもうひとつ挙げるならば、情報が少ないことだ。現代はインターネットが普及し、情報化社会とも言われるが、ことビジネスに必要な専門的な情報の量は、首都圏と地方で大きな差がある。

仮に企業がアジア進出を狙うケースを考えてみよう。首都圏の企業ならば、事前にアジア各国の法規を調べ、市場を調査することは比較的容易にできるが、地域企業の場合、地元に海外事情に詳しい弁護士や調査会社がない。海外進出した企業も僅かで、事例が乏しい。
こうした情報量の格差は、マーケティング力の差に直結する。地域企業の多くが、消費者ニーズを集めて商材を開発・販売していくBtoCビジネスを苦手とし、大手企業の下で生産・販売する下請け企業であり続けるのも、その現れと言える。

成長のための2つの要諦

ならば、地域企業が成長するために何が必要か。それを論ずる前に、地域企業に限らず、企業の永続的な成長に欠かせない2つの普遍的な要素について、説明しておこう。

第一に、「既存事業の自己革新」である。これは、年商数十億円のある服飾メーカーを例に挙げる。その企業は、第二次世界大戦前に創業し、群馬県でモンペをつくっていた。それが戦時中に学生服をつくり始め、戦後は工場のユニフォームやオフィスの制服にシフトし、現在は看護服や介護服を生産して売上げを伸ばしている。高度経済成長期を経て、高齢化社会へと移り行く時代の変化を順応し、顧客を変え、商品を変え、売り方・儲け方を変えて自己革新を遂げた。つまり、既存事業の自己革新とは、端的に言えば、時代適合と言える。

第二に、「新たな事業創造」だ。全く新しい事業を始めるというよりは、既存事業の隣地で新たな事業を創造することを指す。たとえば、家具メーカーが、木との触れ合いに価値を見出し、子供向けの木工体験を始めたとしよう。家具メーカーが体験教育事業に乗り出すのだから、一見すると、全く新しい事業だが、背景には、木を加工する技術が確固として存在し、さらに、木の温もりや安らぎを家庭に届けるという理念があって、その部分は既存事業と共通している。このように、新しい事業が、自社の強みや技術、理念において、既存の他の事業と繋がっていることが肝要だ。

そして、既存事業の自己革新と新たな事業創造は、車の両輪のごとく、併存していなければならない。両利きの経営が求められているのだ。

未来志向で心を開こう

では、改めて地域企業が成長するためには何が必要か。地域企業は、オーナー企業である場合が多いため、地域企業の経営者はどのようにあるべきかについて見解を述べる。

まず、未来志向であるべきだろう。5年後、10年後の世の中の変化を読み、バックキャストする。つまり、先から今を見るのである。
変化を捉える際の切り口は、マーケティング手法のPEST分析を用いるとよい。PはPolitics(政治)やPopulation(人口)だ。政治の変化もさることながら、今後は高齢化や人口減少が加速する。その変化が事業にもたらす影響は非常に大きい。EはEconomy(経済)とEnvironment(環境)。いまや異常気象が顕在化し、温室効果ガスの削減や〝脱炭素化〟の潮流に対して、地域企業も無縁ではいられない。SのSociety(社会)やTのTechnology(技術)も重視すべきだ。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の普及に伴い、事業形態そのものが変化していく。

さらに、地域企業の経営者はオープンマインドである方がよい。というのも、経営者は独り善がりになりがちだ。成功した企業がやがて伸び悩むのは、往々にして事業モデルが強すぎることと、影響力のある経営者がその事業モデルに固執する点にある。時代が変化しても、時代錯誤を続け、ついには時代と大きく乖離して通用しなくなってしまうのだ。〝秘伝のタレ〟は守りつつ、広い心を持って他社を受け入れ、協業して、時代の変化に乗り遅れないように心がけるべきだろう。

さらに言えば、金鉱を掘り当てるまで、仮説と検証を繰り返すこと。これは、半ば精神論に近いが、考えて考えて考え抜いて、何度も試行することは、経営においても重要なことである。10通り試して失敗したら、100通り試行する。必ず答えが見えてくるはずだ。
最後に、私が期待するのは、若い方や女性、業界外の方など、異なる視野・視座を持った経営者だ。その点、3代目社長もいい。初代が新規事業をつくり、2代目は組織の歪みを是正するが、膿を一掃して自己革新を遂げ、新たな事業を創るのは3代目が多い。会社を潰すのは3代目と言うが、会社を伸ばすのも3代目だ。

解説: 代表取締役 島田直樹

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