セミナー紹介

セミナー 2018.05.10

~イノベーションセミナーシリーズ第4弾~

「事業創造と電撃成長」セミナー

アリババ、テンセント、ファーウェイなど、他を圧倒するスピードによる成長を遂げる中国企業。 その背景には、“巨大な内需”や“先進企業の模倣”、“政府の支援”といった中国企業に対する一般的なイメージだけではない“独自の戦略”と“仕組み”があった。 本セミナーでは、3名の中国インサイダーのゲストスピーカーを迎え、電撃成長を遂げる中国企業の新規事業を生み出す戦略とその仕組みを解明した。

【本セミナーのエッセンス】

第1部:中国企業の事業創造と電撃成長
~中国企業の生み出す最先端イノベーション戦略とは~

  • 単なる先進企業の模倣だけではない独自の成長戦略事例を解説
  • 講演者:株式会社中国市場戦略研究所 代表 徐 向東(ジョ・コウトウ)氏

第2部:電撃成長を実現させる仕組みとは

  • 圧倒的スピード感を実現する仕組み(社内システム)事例を解説
  • 講演者:日本美食株式会社 CEO 董 路(ドン・ルー)氏

第3部:平安保険金融グループ成長の軌跡

  • 上場後わずか13年でトヨタ自動車の時価総額にまで急成長した平安保険金融グループの事業創造の方法を解説
  • 講演者:平安ジャパン・インベストメンツ株式会社 代表取締役 中林 毅 氏

第一部
中国企業の事業創造と電撃成長
~中国企業の生み出す最先端イノベーション戦略とは

【講師紹介】徐 向東(ジョ コウトウ)氏
北京外国語大学卒業後、日本に留学。
日本労働研究機構(現:独立法人労働政策研究・研修機構)研究員、中央大学と専修大学講師、日経リサーチ主任研究員・上海事務所総監、日系コンサルティング会社代表取締役などを経て、2007年、株式会社中国市場戦略研究所(cm-rc.com)を設立し、現在に至る。

単なる先進企業の模倣だけではない独自の成長戦略とは?

中国企業のビジネスは、よく欧米や日本のビジネスモデルの模倣であると揶揄される。しかしながら中国企業には単なる模倣ではない「独自の成長戦略」が存在し、これが急成長の礎となっているのである。徐氏には、アリババ、ファーウェイ、シャオミといった有名企業から日本では知られざる企業をも含めた豊富な事例を元に、中国企業の新規事業を生み出す「独自の成長戦略」を解説いただいた。

“プラットフォーム×独自の生態系”を描いたシャオミの戦略とは?

本セミナーで徐氏にお話いただいた中国企業の「独自の成長戦略」は5つあるが、その中でもひときわ興味深いのは、「プラットフォーム構築による短期間で大きなスケール・ビジネスの実現」。これは日本企業のような小さい改善の積み重ねが前提ではなく、初めからトップのブランドデザインを大きく描いてスケールのきくビジネスを志向することである。徐氏には7社の事例を解説いただいたが、特に特徴的であったのはシャオミ(小米)の事例である。スマートフォン出荷量世界第4位のシャオミでは、「モノ作り⇒プラットフォーム構築⇒シャオミ生態系の形成」という独自の成長モデルを描いている。シャオミが重視しているのが、「シャオミファン」を作ること。これはシャオミの製品を起点としてユーザーが動くプラットフォームの形成を意味している。これにより、イベントやサイトでのシャオミコミュニティーの中に新製品・話題製品を落とし込み、世間の注目を集めてWebサイトのユーザー数を増やし認知度を上げ、最終的には製品の売上が伸びる、といった好循環が形成される。関連した家電商品(空気清浄機、炊飯器、掃除機、スピーカー)などにも参入して更にファンを魅了し、加えてリアル店舗への参入による生態系の強化も行っている。プラットフォームを形成して人やお金を動かすのが中国企業の「独自の成長戦略」のひとつである。

独自の成長戦略を支えるECツールの活用方法とは?

徐氏は「独自の成長戦略」を実現するためのツールとしてEC・ネットサービスの活用を挙げている。中国の年間個人消費の15%はECを介して行われており、既に2015年のEC利用者は4億人を超える状況となっている。ECにより低コスト・ハイスピードな情報交流と物流・販売が実現し、農村ですらその状況が窺い知れるほどである。そんな中、消費のみならず経営環境も極めて低コスト・ハイスピードになっている。テレビ電話はもちろん、WeChatなどのチャットアプリを活用し社内コミュケーションを図っている。わざわざ顔を合わさなくても効率的にコミュニケーションできるため、意見交換が頻繁かつ気軽に行われ意思決定スピードが短くなるのである。今や経営の意思決定の根幹にまでEC・ネットサービスが入り込んでおり、それらを活用した徹底したハイスピード化の実現が今の中国企業の急成長を支えている。

第二部
電撃成長を実現する仕組みとは

【講師紹介】董 路(ドン ルー)氏
埼玉大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。スタンフォード大学にてMBA取得後、外資系コンサル、ベンチャーキャピタルを経て、2社のベンチャー企業を立ち上げ、2014年に事業売却。2015年12月、日本美食株式会社を設立。外国人観光客向けスマホ決済と飲食予約サービスを展開中。

成長スピードを速める中国企業版PDCAモデルとは?

董氏には、2社の事例を元に中国企業のビジネスの「生み出し方」と「進め方」を語っていただいた。ここでは特に「進め方」をご紹介したい。董氏によれば、中国企業は仕事の進め方が日本企業とは大きく異なり、これがビジネスの急成長を生み出しているという。日本でも有名な仕事の進め方として「PDCAサイクル」が存在するが、中国企業には、独自のPDCAサイクルが存在する。それは、「アイデア⇒実行」という小さな循環を繰り返すモデル。これは事業計画を策定し、想定リスクをクリアしてから事業を開始するPDCAサイクルとは異なり、まずやってみて、問題が発生したらその都度対応するため事業開始までの意思決定のスピードが速くなる。『どんなに計画しても想定外のことが起こるのならば、まずはやってみる、つまり計画よりもアイデアの実行を率先して行うほうがいい。』と董氏は語る。これが多少のリスクを許容しつつ意思決定スピード・実行スピードを最優先する中国企業の考え方である。

第三部
平安保険金融グループ 成長の軌跡

【講師紹介】中林 毅氏
ハーバード大学ケネディスクールにて修士号取得。日本開発銀行(現:株式会社日本政策投資銀行)、株式会社アイティファームにて取締役、執行役員を歴任した後、2015年11月より現職。ラオックス株式会社、サイバーステップ株式会社の社外取締役を歴任。

上場後わずか13年でトヨタ自動車の時価総額にまで急成長した
平安保険金融グループの事業創造とは?

中林氏には、平安保険グループの事例をもとに、他の保険会社にはない独自の取り組みをご紹介いただいた。平安保険は約180万人の従業員を抱えトヨタに匹敵する時価総額を誇る保険会社であるが、保険・金融という分野を広義に捉え、他の金融機関・顧客を含めた広大なプラットフォームを形成しているのが同社の特徴である。

プラットフォームを次々と生み出し成長を加速

際立った事例として、医療ヘルスケア分野における課題を解決するために生み出されたプラットフォーム「平安ヘルスクラウド」が存在する。中国の医療・ヘルスケア分野には、医療費の高い公立病院の既得権益の横行、情報の不透明性、医師の汚職等さまざまな問題が存在している。平安保険グループはそれを解決する方法として平安ヘルスクラウドを生み出した。患者と医療サービス提供者のマッチングプラットフォームを形成し、患者はオンライン上で病院・クリニックなどの医療サービス提供者の紹介を受けることができ、一方で、医療サービス提供者には臨床サポートサービスや患者データを提供し、診療に役立てることができるようにしている。そのデータを活用し、自社の保険サービスの商品開発・リスク審査にもつなげており、プラットフォームと金融の掛け合わせから医療サービスの向上の一翼を担っている。また、健康管理アプリ「Good Doctor」の配信により、ユーザーごとに適した病院やクリニックの紹介サービスを展開している。このように、平安保険グループは、顧客のニーズをベースとしたサービスの拡充にもつとめており、これらがサービス利用者拡大の牽引役となっているようだ。

おわりに
事業創造の実現に向けて

3名の経営者の講演内容には「プラットフォーム」、「中国企業版PDCAモデル」など様々なキーワードがちりばめられていた。徐氏の「独自の成長戦略」、また中林氏に解説いただいた「プラットフォーム型のビジネスモデル」では、プラットフォームによって顧客をビジネスに直接組み込む方法が取り上げられていた。董氏に解説いただいたビジネスの進め方としての「中国企業版PDCAモデル」は、ビジネスアイデアをすぐに実行(実験)して再修正することが事業を急成長させるための進め方であった。環境変化が激しく、過去の事例があまり参考にならない事業環境に適したビジネスの進め方であり、今後不確実性が高まる中で戦う日本企業にとっても参考になる考え方であったのではないだろうか。

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