セミナー紹介

セミナー 2017.08.24

~イノベーションセミナーシリーズ第1弾~

事業創造セミナー2.0

世界一環境変化が激しいシリコンバレーで成功する企業に共通する新規事業立ち上げ・事業再成長を実現する方法
それは「時流をつかむ」問題設定力と「事業をえがく」手法である

【本セミナーのエッセンス】

第1部:シリコンバレー最先端イノベーション事例から学ぶ、変化に対応する”問題設定力”

  • 最先端イノベーション事例から、その裏側にある“時流のつかみ方”を解説
  • 講演者:日本政府、日系グローバル企業のイノベーション戦略アドバイザー 外村 仁 氏

第2部:事業創造の手法とは

  • 時流をつかんだ事業の“えがき方”について解説
  • 講演者:当社代表取締役 島田 直樹

第一部
シリコンバレー最先端イノベーション事例から学ぶ、変化に対応する”問題設定力”

【講師紹介】外村 仁氏
(ほかむら ひとし)氏
・ベイン・アンド・カンパニー、アップルを経てシリコンバレーでITベンチャーを創業し、資金調達から売却に至るまでを経験
・エバーノートジャパン日本法人会長を経て、現在はベンチャー数社のアドバイザーやシリコンバレー日本人企業家ネットワーク代表を務める
・総務省「異能ベーションプログラム」のアドバイザー、経産省「グローバルネットワーク協議会」の委員として活躍し、安倍首相のシリコンバレー訪問時には案内人に抜擢される

激しい環境変化の中で生き残るには?

今後あらゆる物事がスマート化していく「Smart Society」では、産業の枠組みを超えてICT化が進むことは明らかである。このような激しい環境変化の中で生き残るには、既存の枠組みにとらわれずに戦い方を考えることが必要であり、 “発想の方向を変える”ことが重要であると外村氏は言及した。

発想の方向とは、従来の日本型といわれる積み上げ型・改良型の思考ではなく、問題から逆算する思考である。つまり、「社会にはこんな問題があるから、何かの技術を使って解決できないか」というアプローチである。結果的には同じ方向性になるかもしれないが、発想の起点が異なることで、自社の技術の枠や既存のサービスの範囲に囚われない新たな世界が見えるようになる。その際の考え方として、既存のビジネスにおける前提を疑ってみることも大切なポイントだと外村氏は語った。

アメリカ小売業に見られる変化とは?

既存の枠組みにとらわれない発想の参考事例として、アメリカで最も変化が起きているといわれる小売業の変化を解説いただいた。既存のスーパーや衣料品店などが淘汰されつつある小売業の変化を顧客側から見ると、顧客が感じる問題を既存のビジネスの枠組みを超えて解決している数多くの事例がみられる。ここでは、特徴的な2つの事例を取り上げる。

男性衣料オンラインストア運営企業の「Bonobos」は実店舗を展開し、人気を博している。Bonobosは、実店舗の運営を予約制・データ接客・無在庫でおこなっており、店舗をショールームとして活用してコンシェルジュが顧客データから個人に合わせた提案をおこない、実際の購入はEC上でおこなうというモデルを構築している。この変化は顧客にとって、サイズが合わない・色が無いという問題を解決しているだけでなく、店員が自分の欲しい服や自分の持っていない色などを把握してくれていることが価値となっている。

オーダーメイドメガネを製造・販売する「PROTOS」は、在庫を抱えず、現実的な価格・スピードで顧客にオーダーメイド商品を提供している。これは3Dプリンター技術の発達・安価化、AI技術の発展を背景に実現したビジネスである。

問題解決力の時代から、問題設定力の時代へ

最後の講演のまとめとして、外村氏は自ら問題を設定する力である問題設定力が重要であると語った。近年は、答えのある物事に対して模範解答を答える課題回答力ではなく、答えのない課題を解決する力である問題解決力が重要だという考え方が浸透してきているが、その考え方も既に古くなってきたという。そもそもの問題は何なのか、ということを突き止める力の方がより重要となってきており、それが今後の変化に対応するための問題設定力である。

前提にとらわれずに問題を突き止める、問題設定力を持つために必要な視点として「集合知を引き出す」ことが大切であると外村氏は考えている。自社や自社の属している業界などにとらわれず、様々な人々の話を聞き、物事を見聞きした上で、問題を設定できるようにすることが望ましい。顧客、他業界、異世代、世の中、海外など様々な視点から集合知を引き出すことで、素早く時流の変化をつかむことができ、社会の問題を解決する新規事業や、既存事業のイノベーションに繋がるのである。

第二部
事業創造の手法とは

【講師紹介】
当社代表取締役 島田 直樹
・株式会社ピー・アンド・イー・ディレクションズ代表取締役
・アップルコンピュータ、ボストンコンサルティンググループを経て当社創業
・株式会社日本M&Aセンター社外取締役
その他社外取締役(上場3社/未上場2社)、および顧問・監査役(計6社)を兼任
・東京理科大学大学院イノベーション研究科非常勤講師、立命館大学大学院経営管理研究科客員教授

P&E流イノベーション:「シーズ・ニーズ・ネタ」×「ビジネスモデル」

当社では、イノベーションの定義を「技術・サービスなどのシーズやネタの掛け合わせ」×「ビジネスモデル」と考えている。外村氏の講演にあった問題設定力で突き止めた社会課題に対して、いかに既存の技術やサービスとニーズやネタ同士を掛け合わせるかが重要となる。ここでの重要な観点は、イノベーションを起こす技術やサービスは必ずしも“新技術”や“新サービス”である必要はないという点である。また、それに掛け合わせる「ビジネスモデル」は、忘れがちだが最も重要な要素であると当社は考えている。ここでいうビジネスモデルは、社会の変化に対応した新しい売り方・儲け方のモデルを確立することである。

例えば、P&E流イノベーションでUBERを紐解くと、既存の技術・サービスにタクシー業界に無かった売り方・儲け方のモデルを掛け合わせたことで生まれたイノベーションであるといえる。

新規事業立ち上げをする実現する上で重要な6つのキーメッセージとは?

事業創造には“ゼロからの起業”と“企業内企業(新規事業立ち上げ)”があるが、本講演では企業内企業(新規事業立ち上げ)について取り上げた。ここでは当社が長年新規事業立ち上げに携わってきた中で培ったエッセンスとなる6つの考え方を抽出してお伝えすることとした。

①独自のアンテナ・引き出し

・社内や同業者など同質・内向きな情報ではなく、外向きの、他業界や顧客、異世代、海外など普段は触れない情報に触れ、多面的な視野・視座・視点で物事を考えることが大事である。人と違うアンテナのはり方をし、物事の法則性に人より早く気付くことでチャンスが生まれる。
・独自のアンテナ・引き出しを持つことにより、斬新なビジネスを実現した事例として、アコーディアゴルフがある。それまでのゴルフ業界は、中小業者が乱立する業界であったが、飲食業界や流通業界で起きているチェーン化の仕組みが適用可能であることをいち早く察知し、導入し成長している。

②強みを動詞で

・社内で認識されている強みは神話であることが多く、一度否定して、客観的に見つめなおすことが大切である。自社の強みを“〇〇技術”や“××サービス”といった名詞ではなく、“動詞”で表現することで、新事業の方向性が見えてくる
・強みを動詞で定義している会社の事例として、富士フイルムがある。同社は自社の強みを“粒子を重ねる”、“塗布する”、“整える”と広く定義し、有望な領域への進出を自社の領域の延長線上として捉えた。結果として、衰退するフイルム事業に固執せず、化粧品や医療機器など次々と新規事業の立ち上げに成功している。一方、コダックは自社の強みを“写真フィルム技術”と定義したために、それに固執し破産を余儀なくしたと我々は考えている。

③現代版ビジネスモデルを理解する

・一般的なアンゾフのマトリクスでは市場軸と商品軸のみの二次元だが、P&E流は更に売り方・儲け方軸を追加し三次元で考えている。どのようにお金を取っていくかという売り方・儲け方軸もしっかり意識する事でイノベーションの起きるビジネスモデルが構築できる。
・冒頭で言及したUBERはまさに、売り方・儲け方を工夫した事例である。

④ビジネスモデルは掛け算

・売上・利益の持続的成長は、ビジネスモデルにおいて売り方・儲け方の仕組みが確立されていることが前提であり、差別化×標準化の両輪から成り立っている。
・自社の差別化部分と標準化する部分を明確に定義している確立されたビジネスモデルの事例として、吉野家がある。

⑤隣地はどこか

・“新規事業“と大上段に構えず、動詞で定義した強みが発揮できる「隣地」に出ていく事が最も成功しやすく、強みのあるコア事業のサービスや製品、戦い方から、それが活かせる領域に出ることが重要である。
・隣地に進出して成長する事例として、Amazonは代表的である。コアの強みがある事業はEC事業であり、同事業で保有している機能と外部のパートナーを掛け合わせることで、新規事業を次々と立ち上げ、成功を収めている。例えば、kindleは、ECの機能である“書籍販売プラットフォーム”とパートナーである“出版社”の掛け合わせ、また、Amazon GOは、ECの機能である“決済”とパートナーである“小売店舗”の掛け合わせにより実現している。

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