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バタフライ・モデル:中国式の企業成長戦略(第2 回)

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バタフライ・モデル:中国式の企業成長戦略(第2 回)

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バタフライ・モデル:中国式の企業成長戦略(第2 回)

■蝶の左翼部分:「道、法、術」がスパイラルに上昇する組織の成長モデル

組織が進歩あるいは発展しているかどうかについてどのように判断すればよいのか。

バタフライ・モデルはその一つの指標を提示している。

それは、組織が「術」から「法」へ、そして「道」に至るまで、スパイラルに上昇しているかどうか、である。

 

 

(一)術:策略・権謀

バタフライ・モデルにおける「術」とは、短期的であり組織の外部からは見ることのできない組織行動を指す。

「術」の内容は二種類に分けられる。

一つは「競争意識を伴わない組織行動」であり、もう一つは「競争意識を伴う相手を負かすような組織行動」である。

 

前者は組織に成長の原動力を与えるが、後者には「不正」な気質が存在している。

「術」は「草の根のような知恵」とも言えるものであるが、非常に価値があり知的側面においても人を楽しませるものである。

「三国志」が人気を博する原因はここにある。

 

「孫子の兵法」には「戦争に勝つためには、不正なやり方にも積極的に取り組むべき」と書かれている。

「詭」と「術」は親子のような関係にあり二つを分離することはできない。

「強いふりをすること」と「弱いふりをすること」のいずれも、情報の非対称性を利用し、相手を騙すやりかたである。

 

情報の非対称性を利用することに関しては、

「三十六計」の中の「反間計(注:はんかんけい:兵法三十六計の第三十三計にあたる戦術)」において特に使われている。

陳平がスパイや内通者といった反間計を利用して項羽支持派から范増を排除したこと、

田単が反間計を利用して燕国の将軍の楽毅(がくき)を殺したこと、范雎(はんしょ)が反間計を利用して名将の廉頗を敵の軍隊から外したことなどは反間計の有名な例である。

反間計は人が人を信じきれないという性質を利用し、特に競争がある局面においては多用される方法である。

 

もちろん、「詭」の性質を持つ「術」は人間性の一番暗い面を反映することもある。

例えば秦王朝二世の時期に趙高が丞相の李斯を殺害するために使った方法は中国の暗術であった。

趙高本人が秦朝を滅亡させる、いわば「ガン細胞」だったのである。

法:組織管理及び制度変革の設計

(二)法:組織管理及び制度変革の設計

「法」とは制度を設計することである。

「法」は外部から見ることのできるものであり、長期にわたって効力を持つものである。

バタフライ・モデルにおいて、「法」の部分は組織管理および組織変革の研究分野に該当する。

銭穆は「制度は必ず人事に適合しなければならない。

 

なぜなら人事は制度よりも流動的であり、制度は人が構築し人によって変更されるからである。

制度は人事に依存しているものの人事より安定的であるため人事を制限することもある」と述べている。

「法」が「人」と密接につながっているのは中国の政治思想の特徴である。

長期的な発展を望む組織は「安定した力」を望む。

 

 

「法」はこのような力の一つである。

「法(制度)」は「人(人事)」より遥かに安定している。

そして銭穆は「東漢の最初の三人の帝王である光武帝・明帝・章帝は良い帝王だった。

 

しかし人が良くてもいい制度を構築できなかった」と批判している。

リーダー自身が「良い人」であることに加え、組織の長期な発展のためには良い制度を構築できる能力を持つ必要がある。

それが「優れた組織」であることと、「卓越した組織」であることを区別するのである。

 

 

< 「術」から「法」まで進むことは組織の根本的な進歩を意味する>

「術」にのみ依存していては、組織が生き残りさらに発展して行くことは不可能である。

組織には「運のいい」時期もあるかもしれないが、長期的には「術」だけに頼ると成長することは難しい。

 

「法」は単なる理論ではなく、今までの実践事例から成功の鍵を抽出して作り出されるものであるので、

組織が成長するための原動力と組織にネガティブな要素となるものを明確に区別する。

 

したがって組織の日常的な管理活動の各分野において適切な制度の設計が必要となる。

組織は、制度を人事に適合させる以外にも、外部環境の変化に適応しなければならない。

優れた制度を設計したとしても、長期にわたって制度を運用していると、制度が組織の実態に合わなくなる。

 

そのため制度を革新する必要が生まれる。

中国の歴史において、法家の人は組織革新の分野において重要な役割を果たしている。

現在の多数の企業革新事例を分析すると一つの結論に至る。

 

つまり、中国の歴史上、代表的な革新例(商鞅の変法や王安石の変法など)を理解できなければ、

いかなる大企業の革新に関しても理解できないということである。

「目標+理念(価値観)+方法+ルート」の総合体

(三) 道:「目標+理念(価値観)+方法+ルート」の総合体

「孫子の兵法」では、「道」とは「民をして上と意を同じくする」つまり民衆を指導者と同じ思いにさせ、

民衆と指導者が同じ意思を持つという理想的な状態を作り出すことである、と説明している。

現代の経営管理分野において、「道」は価値観だけを表すものと思われがちであるが、

バタフライ・モデルでは「道」の概念はそれより遥かに大きい。

 

バタフライ・モデルでは「道」とは「目標+理念(価値観)+方法+ルート」の総合体である。

そこには明確な目標と理念(価値観)があるだけではなく、目標を実現する具体的な方法とルートも含まれる。

 

孔子のいう「道不同,不相为谋」(考え方や志向性が異なる者は行動を共にしない)から、

「道」は排他性があると言える。

「道」の持つ排他性はジャックウェルチの理念にもはっきり表れている。

彼はマネージャーを四種類に分けている。

 

第一に正しい価値観を持ち、部門をリードして営利目標を達成できる人。

このような人たちは昇進させる。

 

第二は正しい価値観を持たず目標も達成できない人である。このような人たちは解雇する。

 

第三は正しい価値観を持っているが、営業目標を達成できない人。

このような人たちにはもう一回チャンスを与える。

 

第四は営利目標を達成できるが、会社の価値観と違う観念を持っている人

―このような人たちは会社に致命的な損失をもたらすため、完全に会社から排除しなければならない。

 

< 「道」の原理は「用陰用陽」である>

組織の「道」を実感し、さらに把握できるのはCEO だけである。

「易経」に「道は陰と陽からなる」とあるように、「道」の原理は「用陰用陽」である。

組織のCEO は当該組織を常に柔軟で様々な陰陽状態にしなければならない。

 

バタフライ・モデルでは組織の「用陰用陽」の形態を詳しく分析した。

そのうち、一般概念としては「方/圓、動/静、巧/拙、智/愚」などがある。

 

また組織の管理分野には「用文用武/用恩用威、用儒用法、集権/分権、人事/制度、無為/有為」など、

組織の競争の側面については「用攻用守、用正用奇、用虚用実、用剛用柔、剛実力/軟実力」などがある。

組織管理分野、競争分野、個人の人生観の分野のいずれも、方法あるいは行動の根拠は陰陽と関連している。

バタフライ・モデル「組織成長モデル」の最終的な結論
・バタフライ・モデル「組織成長モデル」の最終的な結論

「道―法―術」のすべてを一貫して保有することができない組織は危険性を秘めている。

「術」をよく使う組織は「流動的な状態」にある。

 

これを組織運営の常態にするべきではない。

 

「法」をよく使う組織は通常の運営形態である。

「術」から「法」まで進むことは組織の安定性を強め、競争力も高まる。

 

組織が「法」のレベルからさらに先のレベルに進めるのはすばらしいことである。

 

というのは、「術」から「法」に進むことができるのはごく一部の組織のみであり、

たとえ「法」のレベルまでたどり着いたとしても、そこからさらに展開できるかどうか、

人事が変わる際に安定性を維持しながら革新的な承継ができるかどうかはまったく予測できないからである。

 

歴史という流れの中の様々な急流、早瀬を下り、広く平坦な河床を見つけた組織は、

「法」のレベルから様々な試みを行い、「ミスの修正」を繰り返すと同時に、

自分自身を成功に導く理念や価値観、方法、そしてルートを発見したといえるだろう。

 

そして、この組織は「道」を獲得し、「道」を実践する者=行道者として評価される。

行道者は複合的な構造をもち、さらに中に含まれている「法」と「術」を首尾一貫したものとする。

「道」は最も安定的であり、「法」は環境に適応する機能を持ち、そして「術」は柔軟に変化させる機能を持っている。

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