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資金調達プロジェクトのデザイン:戦略とIPO の二つの視点から(後半)

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資金調達プロジェクトのデザイン:戦略とIPO の二つの視点から(後半)

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四、XXN 社の資金調達デザインの例(1)

1.XXN 社概要

XXN 社は、凝固タイプヨーグルトをその中心製品とし、複数の乳製品の研究開発、製造、販売を行い、

青海地方のヨーグルト文化と現代的な工業生産との結合に注力する国家ハイテク企業である。

 

証券監督管理委員会が2001 年4 月3 日に公布した『上場会社業種分類ガイド』によれば、

同社の業種は食品製造業の「C0310 乳製品製造業」である。

現在、同社の製品は液状乳、ヨーグルト、乳飲料の3 種類に分けられる。

四、XXN 社の資金調達デザインの例(2) - 1

2.資金調達プロジェクトのデザインで考慮すべき要点

(1)「製品許可」の角度からチーズを考える

当初の候補プロジェクトには「奶酪(チーズ)」が入っていた。

奶酪は中国で乾酪、乳酪とも呼ばれ、芝士、起司、起士という音訳もある。

 

これは通常、牛乳中の大量の水分を取り除き、栄養価の特に高い成分を残したもので、

乳製品の「黄金」として高く評価されている。

西洋では非常に一般的な食品であり、中国でも今後急速に発展し大きな経済効果を生むと予想される。

 

チーズの製造には生産許可証が必要だが、同社はそれまでにチーズの生産許可証を取得しておらず、

その製造経験もなかった。

資金調達プロジェクトについては、意見回答の段階で生産許可を取得していないためにIPO が実現されないという例は珍しくない。

 

チーズプロジェクトは会社の発展戦略にも合致しており、大きな経済利益が期待されたものの、

短期間で生産許可証を取得できなかったため、証券発行審査委員会の審査要求には見合わず、

最終的にはこのプロジェクトをあきらめることになった。

四、XXN 社の資金調達デザインの例(2) - 2

(2)産業リンケージの角度から原料供給について考える

資金調達プロジェクトのデザイン時には、産業リンケージの角度から考える必要がある場合が多い。

産業リンケージのいずれかの段階に戦略的に重要な意味合いがあって、

それがその会社の欠点でもある場合、資金調達を通じてこれを補うことができる。

 

この例で言うと、乳製品の産業リンケージは飼料供給(栽培業)、原乳生産(飼育業、牧畜業)、

乳製品加工、包装材・生産機械、流通販売といった部分から構成されており、以下のようになっている。

乳業は原料乳の獲得競争が激しく、「原乳の出所を押さえたものが天下を取る」と言われており、

優れた原乳源を十分にもつことが、乳業企業にとってコア・コンピタンスになる。

 

同社では主な資金調達プロジェクトがスムーズに実施されるよう(同社による資金調達は

主に「1 日あたり取扱生乳量の300 トン拡大プロジェクト」のためであり、

これは生産能力拡大プロジェクトに属する)、付随する「多乳量乳牛の標準化飼育場建設」プロジェクトを

特にデザインし、自家牧場建造によって、生産能力の大幅拡充後に発生する原乳源の不足を補い、

経営リスクを縮小しようとした。

 

資金配分の面では、同社には牧場運営の経験がなく、

しかも牧場運営と乳製品の製造・販売とを比べると経営理念や日常の業務操作など

いずれの方面でも大きな相違があること、また牧場で産出される原料乳は主に自家用として

対外販売はされないことから、全体的な資金配分として資金が多すぎることは望ましくなく、

最終的に20%前後とされた。

 

経営モデルには本質的な変更を加えず、川上方向へ業務を一定程度拡大することは、

同社の競争力をより強化するためのものであって、リスクは抑止可能であり業界発展の規律にも合致していた。

四、XXN 社の資金調達デザインの例(3)

(3)「マーケティングネットワークの構築」についての配慮

原乳源のほか、市場も重点課題である。

生産能力が大幅に拡充された後に市場での消化能力をどのように保証していくかという問題は、

ほとんどの資金調達プロジェクトで考慮すべき重要なポイントであり、

証券発行審査委員会が特に注目する点でもある。

では、このプロジェクトではマーケティングネットワークの構築は必要だろうか。

 

詳しく評価、論証を行った結果、

私たちはマーケティングネットワークの構築によって会社管理の難度は幾何級数的に増大すると判断した。

 

同社の主力販売地域は北京、上海、広東省などの経済発達地域だが、

会社の所在地は西北地域で、遠方の販売ポイントまで思うように管理が行き届かない。

そればかりか、こうした地域では有利な立地は非常に少なくなっており、

同社にとって賃貸料も大きな負担となることが予想された。

 

また同社は長年の経営を通じて代理店管理については豊富な経験を積んでいるものの、

乳製品の自社販売についてはマーケティング担当者や技術人員がほぼいないに等しかった。

こうしたことから、マーケティングネットワークについては資金調達プロジェクトとはしなかった。

四、XXN 社の資金調達デザインの例(4)

(4)「流動資金補充」についての配慮

資料の準備段階で、会社の帳簿には短期借入金があった。

この場合、調達資金の一部を利用して短期借入金の返済に当てることは適当だろうか。

 

一般的には、調達資金は流動資金の補充に用いるべきではない。

どうしても流動資金の補充に用いる必要がある場合は、通常、調達資金の10%以下としなければならず、

30%を上回る調達資金を流動資金の補充に用いる場合、

過去の事例から見ると一般出資者から同意を得るのは難しいと言える。

 

出資者は、企業の利益状況が良くて流動資金が不足しているのなら、

銀行など金融機関の流動資金貸付を受ければよい、

優良企業であれば銀行側もそれを歓迎するはずだと考える。

銀行から貸付を受けられないのであれば、企業の実際の経営状況、今後の発展には疑問符がつく。

 

こうした点に配慮して、私たちは調達資金の運用についてデザインする際に、

流動資金の補充に利用するのは控えることにした。

五、資金調達のデザインに関するその他の考察(1)

1.「マーケティングネットワーク」構築に関する考察

2009 年の創業板発足以降、創業板だけでなく中小板、主板でIPO プロジェクトを通じて調達され、

マーケティングネットワークの構築に用いられる資金がますます多くなっている。

それでは、マーケティングネットワークの設計にはリスクはないだろうか。

 

過去の事例から言って、調達資金をマーケティングネットワークの構築に投じる場合、

必ずしも証券発行・上場の妨げになるとは限らず、重要なのは以下の各点である。

 

第一に、マーケティングネットワークの構築が、企業の発展にとって差し迫って必要なものであり、

企業の主営業業務と発展目標に密接に結びついたものでなければならない。

 

第二に、マーケティングネットワークの構築は実行可能なものでなければならず

(例:有力企業との間に激しい同業者間競争が発生しない、購入か賃貸かによらず土地問題が解決済みであるなど)、

それが証明可能であることが望ましい。

 

つまり、マーケティングネットワークと業績アップは確かに直結しており、

マーケティングネットワークの構築によって業績を大幅に伸ばせることを企業が証明できて、

すでに成功している先例や経験があればなお申し分ない。

 

第三に、もしそれが証明できない場合、

最も安全なのはマーケティングネットワークの構築に投入する調達資金が多くなりすぎないようにし、

調達資金の総額に占める割合を20%以下とするという方法である。

五、資金調達のデザインに関するその他の考察(2)

2.資金調達プロジェクトのデザイン刷新に関する考察

現在、資金調達プロジェクトの方向性としては、既存製品の生産能力拡大、新製品の開発・生産、

研究開発支出の追加、合弁経営・提携経営、他企業への増資・他企業株式の買入、資産買入、

債務返済、運営資金の補充といった各方面がある。

 

また創業板はサービス能力向上、市場開拓、技術・管理の改善、生産・サービスのフロー・設備の改良、

人材資源の拡充などにも活用できる。

 

実際には、生産能力の拡充、技術改良、マーケティングネットワークの構築、

研究開発センターの設置に用いられる例が多い。

海外や香港地区の資金市場では、監督管理部門は調達資金の使用について国内ほど厳しく対処しておらず、

例えば香港証券取引所に上場しているバスケットボールシューズメーカーの匹克(PEAK)の資金配分が

その好例である。

 

匹克の目論見書によると、IPO 調達資金の48.3%を広告、ブランドプロモーション、マーケティングに

活用するとしており、実際に調達された17 億香港ドルの資金に基づいて計算すると、

これは8.21 億香港ドルにもなる。

 

またマーケティングネットワークの拡大とインセンティブ提供による売上増大促進には、

IPO 調達資金の15.6%、2.65 億香港ドルを当て、

合計10.86 億香港ドルを販売関連に利用するとしている。

 

一方、生産能力拡大や研究開発といったプロジェクトに用いられる資金は調達資金の27%で、

合わせて4.59 億香港ドルとなっている。

 

国内のIPO プロジェクトでは、業界の特徴と企業自身のニーズを

きちんと守りながら資金運用の手配をする必要があり、今後さらなる進展が必要であろう。

 

蔡春華、和君諮詢 上級コンサルタント

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