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中国医薬品業界のトレンド及び競争の変化

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中国医薬品業界のトレンド及び競争の変化

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中国医薬品業界のトレンド及び競争の変化

中国医薬品業界の発展に影響を及ぼす要因は 4 つある、それは、市場、政策、資本、技術である。

これら4 要因から、中国医薬品業界の将来に、成長、統合、高度化という3 つのトレンドを見ることができる。

文/李文明

 

ある投融資サミット会議において、筆者は、中国人女性の妊娠、出産に対する教育などの

支援サービスを提供する企業の人と会った。

 

この企業が提供するサービス内容は出産前、分娩、出産後に分けられる。

出産前のサービスとしては、妊婦に対して専門的なサポートを提供する。

特に生育リスクの大きい妊婦に対して、妊娠中の情緒コントロールと健康管理などのサポートを提供し、

日常生活支援、例えば食事の準備、家事、育児のための準備などに関するサービスも提供している。

 

分娩時のサポートとしては、分娩の最初から最後まで妊婦のそばで心理的なサポートを提供し、

妊婦の知りたいことに答え、妊婦・夫・医師/助産師との間でのコミュニケーションをサポートしている。

 

このように妊婦が分娩する際の心理的な安心と安全を確保する。

出産後のサポートとして、

産婦に対するサービス(たとえば体重管理、乳房管理、産後痛管理、美容管理、産後体操及び飲食管理など)と

新生児に対するサービス(たとえば日常生活の看護、ベビーマッサージ、ベビー体操等)、

家庭生活上のサービスを提供している。

 

上記のサービスをより高い品質で提供するために、当該企業はサポート担当者を多数育成し、

さらには体系的な訓練と資格認証の仕組みを構築してきた。

 

それでは、この企業に対して、ユーザーはどう評価しているのか。詳細に調査する時間はないものの、この企業は非常に成功しており、すでにチェーン展開を始めているようである。これには筆者は思わず感銘した。

 

つまり、出産というごくありふれたことに関して、これほど専門的なサービスニーズがあるということに。

このことは私につい最近研究した糖尿病のことを思い出させる。

かつて消渇病と言われた糖尿病には「三多一少」の症状があり、

治療には多くの調剤薬がつかわれた(たとえば腎気玉など)。

医療に関する史料を見ると、糖尿病の原因は飲食不調、過剰な飲酒によるものだといわれていた。

 

しかし、医学の進歩によってインシュリンが血糖値をコントロールできることがわかった。

今や血糖測定器を使って血糖値を計り、各種の飲み薬によってインシュリンの分泌を改善し、

さらに飲食と運動とを合理的に組み合わせることによって、

血糖値をコントロールすることによって糖尿病の発病を減少させることができる。

 

糖尿病の治療方法の発展をみると、初期の経験だけに頼って診療することから、

科学的な方法で診療することに発展し、

さらに系統的に疾病管理、健康管理をするようになるという発展のプロセスをたどっていることが分かる。

業界発展に影響を及ぼす要因(1):市場

業界発展に影響を及ぼす要因(1):市場

高齢化がヘルスケアニーズの急速な成長をもたらしている。

2011 年 4 月 28 日に国家統計局が公表した第 6 次全国人口調査の主要データをみると、

我が国の人口総数は 13.4 億人、そのうち 60 歳以上の人口は 13.2%、65 歳以上の人口は 8.87%を占めている。

2000 年に行った第 5 次全国人口調査と比較すると、60 歳以上の人口比率は 2.93 パーセント、

65 歳以上の人口比率は 1.91 パーセント上昇している。

 

高齢者は常にヘルスケアニーズの中心であり、高齢人口の増加はヘルスケアに対するニーズを急速に高めることになった。

社会の上位階層におけるヘルスケアニーズが分化している。

2011 年の胡潤による資産ランキング調査によると、

2010 年までに、香港、マカオ、台湾を除いた 31 の省、市、自治区において、富裕層は 96万人となり、

その前年と比較して 9.7%上昇している。

富裕層に属する消費者はより高度でハイテクな医療サービスを望んでいる。

基本的な医療に対するニーズも急速に高まっている。

 

新しい医療改革計画の推進によって、

今後、国は主に基本的な医療保険分野を中心に資金を投入する。

たとえば基本医療保障制度の健全化、基本医療衛生サービスのアクセス向上、

市民個人が負担する医療費の軽減などがあげられる。

 

これは基本的な医療製品やサービスの市場が急速に成長することにつながる。

これらの要因により、市場ニーズは継続的に拡大し、ニーズの細分化も進み、

中国医薬品業界の急速な成長をけん引する力となるであろう。

業界の発展に影響を及ぼす要因(2):政策

業界の発展に影響を及ぼす要因(2):政策

近年、新しい医療改革が全面的に進む中、医薬品業界はこれまでなかったような大幅な政策の変化に直面し、

また新しい政策が打ち出される頻度も非常に高くなっている。

 

2009 年4月に、中共中央国務院が『中共中央国務院の医薬衛生体制改革に関する意見』を公表し、

地方も含む多くの市民をカバーする公共衛生サービスシステム、医療サービスシステム、医療保障システム、

医薬品供給保障システムを構築し、四位一体の基本医療衛生制度を構築することを発表した。

 

これにより医薬衛生の管理、運営、投入、価格、監督体制を改善し、技術と人材・情報・法律の面を強化し、

医薬品衛生システムの有効性および規範的な運営を実現する。

 

国はまた、新しい医療改革の実施を進めるために、『国家基本医薬品制度の構築に関する実施意見』、

『公立病院改革に対する指導意見』、『国家基本公共衛生規範』、『医薬品価格管理政策』など

複数の政策と法律を次々と公表した。

 

同時に、業界の発展を推進するために、

さらに『国務院の中医薬事業の発展の支援と促進に関する複数の意見』、

『2010~2015 年全国医薬品流通業界の発展計画』や『バイオ医薬品産業の「十二・五」発展計画』等を発表した。

以上の政策及び今後発表される新しい政策が中国医薬品業界に与える影響は非常に大きい。

 

全体的には、政策を出すことのもともとの意図は、医薬品業界の発展に規範を与えることにある。

業界の発展に影響を及ぼす要因(3):資本

業界の発展に影響を及ぼす要因(3):資本

近年、医薬品業界の急速な成長は資本市場からの関心をも引き出した。

 

たとえば、2010 年には、中国医薬品業界において34社が新規に上場し、

426億元の資金調達を行った;医薬品業界でのVC/PE投資を受ける企業は 132 社であり、

投資金額は 84 億元にのぼる;上場による資金調達に加え融資による借入金をもあわせると、

医薬品業界においてこの一年以内に 1,000 億元を超える資金が投入された。

 

これほど大規模な資本の増強は中国の医薬品業界に何を意味しているのだろうか。

資本の流入は、中国医薬品業界の成長方法が

製品中心の経営から製品と資本両方による経営に変化することを意味している。

 

つまり、中国医薬品企業の再編が資本の力によって進んでいること、中国医薬品企業の競争環境の転換、

医薬品業界のバリューチェーンが資本の力によって急速に統合されていくことを意味している。

これらの要因はすべて中国医薬品業界の急速な発展を推し進めていくであろう。

業界の発展に影響を及ぼす要因(4):技術

業界の発展に影響を及ぼす要因(4):技術

バイオ医薬品業界は、科学技術的には最も革新的な領域の一つであり、

投資金額も高く、ハイリスクハイリターンである。したがってバイオ医薬品企業にとって、

研究開発力が結果的には企業のコア競争力を決定づける。

 

グローバル市場でトップに位置する医薬品企業は、

一般的には売上の 10%を超える資金を研究開発に投入している。

国内のバイオ医薬品企業は、技術の面で依然としてグローバルリーダー企業より劣っているが、

近年はイノベーションを試み始めている。

 

新薬開発においては、特許を取得した新薬が出始めている。

生産と物流において、情報技術を広範に応用することにより、製造レベルが国際的な水準にまで近づきつつある。

医薬品の流通とその使用においては、インターネット技術によって e コマース、病院の情報化、

遠隔医療など様々な新しいビジネスモデルが生み出されている。

 

新しい技術がバイオ医薬品業界のさまざまな面で応用されていくため、

業界の発展は量的成長にとどまらず、質的にも向上していくだろう。

これは中国医薬品業界の発展の重要な支えとなる。

 

このように、市場、政策、資本、技術は現在の中国医薬品業界の発展に影響を与える主要な要素である。

将来の巨大な市場ニーズは中国医薬品業界の発展の牽引力になり、

政策と法律は規範となり、大規模な資本流入は推進力になり、継続的な技術開発は業界発展の支えになる。

 

この 4 つの要因の影響のもと、中国の医薬品業界は将来、以下の 3 つトレンドを示すと考えられる。

中国市場のトレンド:成長・統合

トレンド(1):成長

業界規模は持続的かつ急速に成長する。

 

現在、中国医薬品工業の総出荷額は約 1 兆元にのぼる。

近年の約 30%の年平均成長率で計算すると、2015 年末までには、

この数字は 3~4 兆元規模になるだろう。業界の細分化が進展する。

市場ニーズの変化によって、業界が治療対象、消費水準、消費者及び製品の属性などに

よってさらに細分化していき、最終的には総合的な医療保健体系を形成すると考えられる。

企業規模が拡大する。

 

2015 年末になると売上高 100 億元規模の企業が一般的になり、1,000 億元企業が出始めるだろう。

中小の医薬品企業が積極的に経営を展開し、融資と上場が戦略のメインテーマになる。

現在、バイオ医薬品分野の上場企業は 200 社存在するが、

2015 年末には上場企業の数は少なくとも現在の 2倍である 400 社にまで増加すると予測される。

 

トレンド(2):統合

医薬品流通業の統合が、より激しくなる。

国薬、華潤、上薬などの企業が1,000億元規模の売上を達成することによって、

中国の医薬品流通業界では上位集中度が急速に高まり、現在の合併動向から推測すると、

2015 年末には三大企業が医薬品流通市場の半分以上を占めるだろう。

 

医薬品製造業界の統合は緩やかではあるが持続的に進む。

製造企業がこれまでと同様に製品ライン拡大にむけた合併を継続して行うほか、

バリューチェーンに沿った垂直統合も進むと思われる。

 

たとえば康美薬業による中薬産業に対する買収、連邦製薬の化学製薬においての戦略等があげられる。

一定規模以上の企業では多角化による成長が始まるだろう。

たとえば天士力が白酒とお茶市場に参入することはその一例である。

中国市場のトレンド:高度化

トレンド(3):高度化

製品の高度化が加速する。毎年 1,000 億元の資金が業界に流入することによって、

研究開発部門に相当の資金が振り分けられると考えられる。

新薬の開発も遠い未来ではないだろう。経営モデルが急速に高度化する。

 

市場シェアを高めるために、調達、研究開発、生産、販売などのプロセスで様々なアライアンスが形成されたり、

合併による企業成長が見られる。

たとえば歩長製薬と中恒薬業の提携などの例があげられる。

 

中国の医薬品業界の世界におけるポジションは少しずつ変わっていくだろう。

原薬の世界的な生産拠点から、最も大きな潜在的ニーズをもつ医薬品市場に変わっていく中で、

医薬品企業の全面的な戦いが始まりつつある。

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