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中国のプライベートエクイティ市場とその動向

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中国のプライベートエクイティ市場とその動向

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Ⅰ:プライベートエクイティ市場の状況(1)

プライベートエクイティ(以下、PE)の最も基本的な価値は、企業の発展のために資金を提供することにある。

しかし、特に流動性が過剰となっている中国の市場環境においては、

PE が成功するためには、資金提供だけではなく、企業にそれ以上の価値を提供しなければならない。

したがって、PE 市場では、資金を提供するという意味での純粋な投資家は比較的珍しい存在である。

 

それぞれのPE は独自の特徴を持っており、さまざまな企業に異なる価値を提供することが可能である。

PE 市場を眺めると、提供する付加価値は以下の4 種類に分けられる。

 

(1)産業型付加価値

産業型付加価値とは、PE が提供可能なチャネル、技術、人材、ネットワークなど、

企業成長に必要となる産業内の資源を提供することを指す。

これは産業型投資家の通常の手法である。

たとえば農業ファンドである新希望は、現在、重慶市、雲南省、青島市、河北省、湖南省、四川省など

全国規模で多数の優良乳業企業に投資を行っている。

 

投資を行う際には、資金提供の他に、輸出管理、専門家(たとえば、高品質の乳牛を選抜する人)の派遣、

政府とのネットワークの提供(農業省、科学省の各種支援基金の申し込みなど)など、

様々な支援を行っている。

 

また新希望は業界を見極める能力を活用することによって、

上場前(Pre-IPO)の段階にとどまらず、より初期の段階での投資案件にも投資を行っている。

 

産業型投資家以外にも、外資系を含む様々なファンドが類似の投資方法をとっている。

たとえば、紅杉ファンドによる風力発電への投資や、IDG によるEC サイトへの投資を挙げることができる。

 

当初、これらのファンドは業界に関する知識やノウハウを保有していなかったが、

ある一つの分野に注力し、投資案件数を増やし、業界に関する知見を蓄積する、

これを繰り返すことにより、投資候補先企業との関係が生じてくるのである。

Ⅰ:プライベートエクイティ市場の状況(2)

(2)通路型付加価値

通路型付加価値とは、現在、中国証券監督管理委員会が

企業の上場に関する承認権限を握っているという意味で完全ではない資本市場において、

企業の上場に必要となる能力・資質およびネットワークなどの資源を提供することを指す。

 

当該価値はPre-IPO の段階では非常に重要なものであり、

企業は、株主に配当を行うことによって、これらの資源を提供してもらう。

この付加価値を類型化することは難しいが、大きく「日向型」と「日陰型」の2 つにわけることができる。

 

「日向型」の代表的な例は証券会社である。

証券会社が提供する価値として、主に二つのポイントが挙げられる。

 

第一に、資金の出し手としての証券会社が投資後に企業のパートナーとしての役割を継続して果たすことである。

証券会社が継続してかかわることは、証券会社が当該企業を認めることとみなされ、

投資される側である企業はある種のお墨付きをもらったということになる。

 

第二に、上場する際、企業は証券会社がもつ証券監督管理委員会とのネットワークを利用することができる。

この二つの武器を生かし、証券業者はPE市場で新しい勢力として台頭してきた。

たとえば国信証券傘下の投資会社である国信弘盛を例にとると、

活動を開始した2009 年から20 以上の案件に投資し、現在の投資残高は3億元を越えている。

今まで投資された20 社以上の企業がベンチャー市場やSME ボードに上場するなど、

非常に輝かしい成果を残している。

 

他方、「日陰型」とは、PE のパートナーのポジションにいる人が、

証券監督管理委員会や国家発展改革委員会などの権力部門に対して非常に幅広い人脈を持ち、

企業が上場する際に大きな助けとなることを指すものである。

 

この場合、PE の果たす役割は表に出るものではなく口伝えで残るにすぎず、

公に認知されているわけではない。

このようなPE はその保有する人脈の質により最終的な結果も異なる。

経営が順調であるPE ファンドは規模が非常に大きくなっており、

将来的には「日向型」の価値を提供するようになる。

そのほか、知名度はそれほど高くはないが、

非常に強力な後ろ盾が存在するために高い業績を実現しているPE も多数存在する。

 

たとえば、前シンセン市副市長である武捷思が運営する「富海銀涛」はその一例である。

「日陰型」では、好業績のPE も含めそれほど認知度の高くないファンドが多数存在する。

このようなファンドは投資先企業に対して当初から広い人脈を持つことを訴求している。

Ⅰ:プライベートエクイティ市場の状況(3)

(3)地域資源型付加価値

この種の付加価値を提供するPE は、主に地理的エリアに注力し、

当該地域に関して多くの知識やノウハウを保有している。

PE は、地方政府へのネットワークや販売チャネルなど、企業に必要となる地域型資源を提供することができるため、

そのようなPEから投資された企業は、地域に属する優良企業と取引ができるようになる。

 

通常は、このようなPE は全国規模での知名度はそれほど高くないが、地方単位では非常に有名である。

最も代表的な例は蘇州産業パーク誘致ファンド、天津滨海誘致ファンド、浙商創投などである。

 

このタイプから事業を始め、現在全国的なPE にまで成長したファンドは、

PE 市場の過熱と競争の激化に伴い、二つの新しい傾向に分化しつつある。

 

1 つは提携モデルであり、深創投(シンセン・キャピタル)がその代表例である。

国家の政策を利用し、全国各省の企業投資ファンドと提携し新たな基金を作り出す手法で、

これまでおよそ20 種類のファンドが設立されている。

このモデルを通して、深創投は各地方政府と繋がり、地方の資源を有効活用すると同時に、

自社が運営するファンドの規模を拡大することが可能となった。

 

2 つ目はチャネルの自己開発モデルであり、九鼎がその代表例である。

九鼎は3 年前からチャネルの深化に注力し、今では業界でも注目を浴びる存在となっている。

事業開発を行う多くの営業マンを全国各省に派遣し、各地で「地域資源」を保有する人と協力し、

地方プロジェクトを共同で開発していく。

 

この方法によって多くの有望な投資プロジェクトを発掘したのである。

注目すべきことは、九鼎の資金調達も同じモデルで行われており、

現在、同ファンドの調達総額は100 億元に達している。

Ⅰ:プライベートエクイティ市場の状況(4)

(4)コンサルティング型付加価値

この種の付加価値を提供するPE のパートナーのポジションにいる人は、

企業へのコンサルティングやサポートによって

将来的には上場企業に準ずる企業となるようなクライアントを多数抱えている。

早期にコンサルティングや人材育成を始めており、

また企業が成長する過程においてコンサルティング会社や起業支援機関からアドバイスを受けており、

すでに個人的にも企業との信頼関係を築いているので、投資も実行しやすい。

 

このようなPEの最も代表的な例は和君資本である。

2009 年11 月に事業を開始し、累計の運用資金は30 億元を越え、

30 以上のプロジェクトで投資を行っている。

 

和君資本の急速な成長を支えているのは、

十数年にわたる和君集団のコンサルティング業務である。

和君集団の「資本の投入、管理の改善、企業価値の増加」という理念に基づき、

和君資本は投資管理業務において具体的な指導を行っている。

 

支援先企業の利益を共有するパートナーシップを築いた上で、

資本面でのサポート、マネジメント水準の向上、上場計画の作成など、さまざまな提案・支援を行う。

和君資本が成長するにあたって、企業成長に伴う企業価値の増加は最も重要なポイントとなる。

Ⅱ:中国国内PE の発展の方向(1)

(1)Pre-IPO のチャンスは依然として存在する

30 年にわたる中国経済の成長期において誕生した多くの優良企業にとっては、

株式市場への上場が必要となっている。

しかし国内株式市場の発展が緩やかなため、多くの企業は未だ上場を実現するには至っていない。

 

これまで、上海とシンセンの各証券取引所における上場企業数は2,000 社程度にすぎない。

経済力の観点から見て、日米の資本市場と照らし合わせると、

上場企業の数は6,000~8,000 社になってもおかしくはない。

 

さらにOTCなど取引所外取引まで含めると1 万社を越えるはずである。

つまり、上場条件を満たしている多数の企業が上場を待っている状態である。

 

しかし、現在、発行市場と流通市場での株価の価格差が縮まり、利益が大幅に縮小している。

そのためPre-IPO に注力している投資機関は、短期で利益を追求するという考え方に基づき、

自社のチームを強化し、強みと特徴によって自社の発展の方向性を決めるべき時期に至っている。

Ⅱ:中国国内PE の発展の方向(2)

(2)新しい市場競争の時代が到来する

現在、PE 市場は活況を呈しており、投資案件も多数存在するので、大勢の人が市場に群がってくる。

この状況は1980~1990 年代の状況と酷似している。

 

しかし、手法は大きく変わった。昔は「早いもの勝ち」であったが、

現在のPE 市場は「参加式」である。

つまり熟した果物を他の人から一口分けてはもらえるものの、

全てを独り占めすることは不可能なのである。

PE ファンドにとって他の企業と信頼関係を構築することができれば、

たとえばM&A などさらに一段階進んだ取り組みを実現することが可能となる。

 

PE が発展するためには、積極的に市場に参入し、資産運用をしっかりと行い、

資源を確保していかなければならない。

そのためには自社なりの方法と戦略を考えなければならない。

そうしなければ、利益をあげられるのは良好な機会に恵まれた時のみとなり、

長期的な競争力の源泉となるコアコンピタンスを構築することができない。

 

大胆に予測すると、将来のPE 市場において成功するのは、

現在、自社が対象としている業界や地域を深化させているところである。

深化させることはあくまで手段であり、その真の目的は、潜在力をもつパートナーと資源を獲得することにある。

Ⅱ:中国国内PE の発展の方向(3)

(3)PE ファンドは分化し、専門性が成功の鍵となる

現在のPE ブームが終焉すると、市場では多くのファンドが分化していくだろう。

仮にもう一度金融危機が発生した場合は分化が加速すると思われる。

PE 市場には弱肉強食という特徴がある。

 

将来、ほとんどのPE ファンドが消滅し、わずかに残っているものは自分なりの市場セグメントを見つけだし、

自分の長所をさらに特徴的なものにして発展していく。

現在このような傾向はすでに見られる。

市場の先を見通すことは難しいものの、実は法則というものがある。

 

プロジェクトの規模により、PE ファンドを2 つのタイプに分けることができる。

中信産業基金、新天域のような巨大なネットワークを持つファンドは

基本的に大規模プロジェクト(1 億元以上)しか対象とせず、質で勝負する。

九鼎のようなファンドは中小プロジェクトに専念し量で勝負する。

 

これは、投資銀行業界において中金中信が大規模プロジェクトしかおこなわず、

国信、平安、広発などは中小プロジェクトのみを実施するという状況と似ている。

Ⅱ:中国国内PE の発展の方向(4)

(4)将来は二極化する

推計データによると、現在、業界内に5,000 社以上のPE ファンドが存在する。

この5 年間で、ベンチャーキャピタルおよびPE は1~1.5 兆元の資金を投資し、

結果としては成功したファンドと失敗したファンドとに分かれている。

 

PE 業界は、Pre-IPO を対象に事業を行う現段階から、

今後は産業バリューチェーンの二極化という次の段階に進むであろう。

つまり、業界をさらに深堀りし、ベンチャー投資を行うという一つの極と、

他方、市場を分類し、資源の組み合わせを最適化するためにM&Aなど行う極である。

 

アメリカのような成熟市場では同様の傾向がみられる。

たとえばシリコンバレーではベンチャーキャピタルやエンジェル投5資家が多く集中する一方、

KKR、Carlyle Group はM&A をメインに取り組んでいるのが好例である。

 

和君資本パートナー

王立

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